目的/設置の趣旨

 

大学院の目的

 東京家政大学大学院は、建学の精神に則り、学部の教育課程を基礎とし、高度にして専門的な学術の理論及び応用を研究教授し、その深奥をきわめ、広い視野に立って高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、広く社会と文化の発展に寄与することを目的とする。

研究科設置の趣旨

 東京家政大学は、明治14年に東京女子師範学校(現お茶の水女子大学)の教師であった渡辺辰五郎が、「時代の要請に応え、民衆の必要を基盤とし、女性の自主自律を願い、新しい時代に即応した学問技芸に秀でた師表となる有能な女性を育成する」ことを教育理念として、本郷湯島の地に創設した和洋裁縫伝習所をその起源に持つ。和洋裁縫伝習所に起源を持つ学校法人渡辺学園は現在、大学院、大学、短期大学部、附属女子中学校、女子高等学校、幼稚園、ナースリールーム併せて7,000人を超える学生・生徒・園児を擁する学園となっている。本学園は平成23年度に創立130周年を迎え、戦後1949年に大学が設置認可されてからも60余年が過ぎている。家政学研究科は、平成元年に修士課程からスタートし、平成5年に博士後期課程を設置し、文字通り家政系大学の最高学府に相応しい内容を整えた。その間多くの修了生を輩出し42名の博 士が誕生した。

 家政学研究科は家政学部児童学科、栄養学科、服飾美術学科を基礎として、食物栄養学専攻、被服造形学専攻、児童学専攻を柱として修士課程を築き、博士後期課程は家政学を核としながらさらにフィールドを広げ、人間生活全般にかかわる探求へと発展させた人間生活学専攻として、それぞれを開設してきた。

 家政学研究科が開設され20余年を過ぎており、基礎となる家政学部は、服飾美術学科美術専攻が、生活美術全般を中心とした造形表現学科に発展し、児童学科児童教育専攻は、学校教育においてより質の高い教育力・実践力・教科教育の力を伸ばす教員養成を目的として児童教育学科を設置する方向へ発展した。また、栄養学科理科コースも環境情報学科から環境教育学科へと改組転換を図った。栄養学科も、平成14年に栄養士法が改正され、管理栄養士国家試験が施行されたことに伴いカリキュラムを一新し、栄養士・管理栄養士の専門資質の向上に対して全国レベルでの改革が行われた。何れも、従来の家政学をさらに深化させ、生命と生存に根差した、人の一生と生活全般にかかわる学際的探求課題へと裾野を広げてきている。

 一方、文学部においても、人文学部へと名称変更を行い、心理教育学科は時代の要請に応えて心理臨床、生涯学習及び社会福祉の三分野の充実を図ってきたが、それぞれの学問領域の専門化、高度化に対応するため、心理カウンセリング学科と教育福祉学科の2学科に発展改組を行った。また、英語英文学科は英語教育を中心にしながら、コミュニケーション能力育成をより重視した教育を目的としたカリキュラムとし英語コミュニケーション学科へと名称変更を行った。文学研究科は、平成8年英語英文学専攻及び心理教育学専攻を設置し、平成12年には財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認可する第1種指定大学院として臨床心理士を養成するため、心理教育学専攻に臨床心理学コース・心理教育学コースを設定したが、その後、従来の文学研究から、人文全般に関する学際的探求課題への展開がなされてきた。

 本学では、以上のように家政学をさらに深化させつつ、生命と存在に根ざした人の一生と生活全般にかかわる課題探求へと裾野を広げてきている家政学研究科と、従来の文学研究から人文全般に関する学際的探求課題へと展開が進んできた文学研究科とを統合し、人間生活学総合研究科の1研究科とし、修士課程6専攻と博士後期課程の人間生活学専攻を設置することとした。

 人間生活学総合研究科は、家政学と人文学の基盤を踏まえつつ、生活学の内容を従来の内向きの「家庭」という枠に囚われることなく、衣、食と健康、福祉から心と保育、教育までを包括した人間の生命活動と生存活動の探求を深めると共に、グローバル化し、文化的な質の高い生活技術と生活意識を幅広く探求するものと捉えなおすものである。このように2研究科の統合によって、人間生活学総合研究科はこれまでの2研究科内の専門相互の学びあいも可能となり、広く複眼的な視野を持つ有為な人材を養成することが可能となる。また、修士課程の専攻名称は基礎学部の名称と対応しており、学部と大学院の継続性を明確に示すとともに、新たな今日的課題に応えられるように養成する人材像を明確にし、学修システムの弾力化を図ることによって、学生・社会人のニーズに幅広く応えるものとなっている。

 本学の2代目学長青木誠四郎は、戦後の文部省にあって戦後教育の復興に力を尽くし、その後本学に着任した。青木誠四郎に“実際家は日々の事に追われて研究に遑(いとま)なく、研究者は現実を見ず、現状を知らずして机上に理論を楽しむといった風では好ましくない。畢竟(ひっきょう)、学は協同事業でなくてはならない”という言葉がある。研究のための研究でなく、本学は所謂大学院大学を目指すのでもなく、「現場に学び、共に研究し、研究成果を現場に生かせるように!」を本大学院の基本理念としたい。そのためには、研究能力と課題解決能力を合わせ持ち、実社会でリーダーとなれる人材育成を目指すと共に、現職社会人を広く迎え入れられるよう、さらに段階を踏んで体制を整えていく計画である。

 これらを踏まえ平成24年4月から、人間生活学総合研究科修士課程に、児童学児童教育学専攻(入学定員5名)、健康栄養学専攻(入学定員5名)、造形学専攻(入学定員4名)、英語・英語教育研究専攻(入学定員4名)、臨床心理学専攻(入学定員8名)、教育福祉学専攻(入学定員4名)を、博士後期課程に人間生活学専攻(入学定員3名)を設置し、大学院のさらなる教育・研究の向上に取り組むこととした。

研究科の目的

 人類が普遍に持つ、衣・食と健康・福祉から、心と保育・教育までを包括した人間の生命活動と生存活動の探求を深めると共に、グローバル化し、文化的な質の高い生活技術と生活意識を幅広く探究し、それぞれの専門性を深めると共に、新たな今日的課題に応えられる広く複眼的な視野を持つ有為な人材の養成を目的とする。