理事長挨拶

 


「最良の教育」「最強の経営」の
女子学園を目指す

 創学142年の輝かしい伝統を誇る渡辺学園の中核、東京家政大学は2023年3月、満開の桜の下、大学院、大学、短大の卒業生1,640余人を社会に送り出し、ほぼ同数の新入生を新緑の板橋、狭山両校舎に迎え入れた。3年にわたるコロナ禍がようやく鎮静化しつつある中、学生の手にレベルの高い資格をつけ、社会に貢献する明確なビジョンを持ち、四年制大学での6学部13学科が活性化する両校舎は、交通の便も良く、活気がみなぎっている。

 しかし私立大学をとり巻く環境は一段と厳しさを増している。日本経済の「失われた32年」は反転の気配をみせず、少子化は歯止めがきかない。加えて昨年2月に始まったロシアの不法なウクライナ侵略はエネルギー、資材、食品価格などの高騰を招いている。コロナ禍も完全に消滅したわけではない。

 このため私立大学の赤字計上校は、日本私立学校振興・共済事業団の調査でコロナ大流行前の1999年に47%、コロナ禍での2020年、2021年は各校が危機感をもって経営に取り組んだためか赤字校は減少しているが、それでも35%、33%がマイナスの構造不況に陥っている。東京圏内の女子大では2017年に東京女学館大が閉鎖、今年3月には恵泉女学園大学・大学院が2024年から学生募集停止を余儀なくされるなど淘汰も出始めてきた。

 この中で東京家政大学は一貫して年間10億円以上の黒字を計上し続けている。私が8年前の学園理事長に就任以降、「学生ファースト」を掲げ学内LAN環境に3億3千万円を投じ、2021年に整備を完了。トイレのウォシュレット化に5億7千万円を投入、すでに7割を変更した。2020年のコロナ発生時に他大学に先駆け全学生、生徒全員に5万円を給付、生活の苦しい学生には1人7万円を追加給付。オンライン用パソコン600台の購入などコロナ対策に6億円を支出した。その2020年度も大学は10億円強の黒字、学園全体でも4億4千万円の黒字を計上出来た。

 理事会、教職員、学生・生徒が一丸となって努力したたまものだが、忘れてならないのは私が清水司前理事長(元早稲田大学総長)の熱心な要請を受けて学園理事長に就任した2016年4月から着手した「教育」「財政」「構造」「意識」の「四大改革」の遂行が成果を挙げつつあるためだ。

 「教育」は大学の学長選挙を教授会にゆだねていたのを、外部有識者、理事会メンバーも加えた会議でスクリーンし、教授会の意向を参酌(さんしゃく)の上、理事会で審議、理事長が最終決定する仕組みに変更。山本前、井上現学長はこうした学園の総意で選ばれた。「動には動」のスピリットを理事長と共有する井上学長のリーダーシップによる学部、学科の両編成につながっている。

 「財政」は巨額赤字続きの附属中・高校の4次にわたる再建計画で、入学者の増加と、生徒数に比べ過剰な教員9名の円満退職を同時達成した結果、年間4億円近くの赤字を2年間で1億7千万円にまで縮小した。「構造」は学園の経費+設備予算が毎年12%、5億円強余る予算策定の甘さを正常化するもの、「意識」は学園内外のコミュニケーションの活性化、ハラスメント・ゼロ、あいさつの励行を主眼に置く。

 「四大改革」はいずれも本格始動したばかりだが、新年度から一段とギアを上げて前進させる。目的はどんな環境悪化にも対応出来る「最良の教育、最強の経営」を有する女子学園である。

略歴

学歴

昭和32年 3月 甲陽学院高校卒業
昭和36年 3月 早稲田大学 第一政治経済学部卒業

職歴

昭和36年 4月 日本経済新聞社 入社
昭和46年 3月 日本経済新聞社 ニューヨーク特派員
昭和62年 3月 日本経済新聞社 米州編集総局長(在ニューヨーク)
平成 2年 3月 日本経済新聞社 取締役 大阪本社編集局長
平成 5年 3月 日本経済新聞社 常務取締役 名古屋支社代表
平成10年 3月 日本経済新聞社 専務取締役 大阪本社代表
平成13年 6月 テレビ東京 代表取締役社長
平成19年 6月 テレビ東京 代表取締役会長
平成23年 6月 テレビ東京 取締役相談役
平成29年 6月 テレビ東京 特別顧問
令和元年 6月 公益財団法人 交通遺児育英会 会長
平成26年 3月 学校法人渡辺学園 監事
平成28年 4月 学校法人渡辺学園 理事長