研究科長メッセージ
KASEI学を考え続ける: 人間生活学総合研究科が目指す学びとは
東京家政大学の英語表記はTokyo KASEI Universityとあるように,“家政”をHome Economicsではなく“KASEI”と固有名詞化していることに注目しています。これはひとつの学問領域として“KASEI”学の確立を意識するものであり,その確立こそ「人間生活学総合研究科」が目指す学びと解釈しています。
本学大学院の沿革はホームページ「研究科設置の趣旨」にあるように,「家政学研究科」と「文学研究科」を融合・統合して「人間生活学総合研究科」としています。その「人間生活学総合研究科」の『修士課程』には,6つの異なる専攻(「児童学児童教育学専攻」「健康栄養学専攻」「造形学専攻」「臨床心理学専攻」「教育福祉学専攻」「英語・英語教育研究専攻」)が配置されています。そしてこれら6つの異なる専攻領域は,『博士課程』においてひとつの「人間生活学専攻」として学際的に収斂させているところを特徴としています。
本研究科では各専攻の専門性に捉われない学びを重視しており,専門性という枠を“自由に”超えた学びに興味・関心を寄せられる“知性”と“感性”を大事にします。この姿勢は,自分が所属する専攻の専門性について考え直す機会を得ることにも繋がります。“人間”と“生活”という当たり前の対象について意識的に向き合いながら,専門性の視野を広げて様々な領域とのつながれる“共通性”を見つけることで,自身の専門性に新しい価値観を加えてください。
今や体の一部,生活の一部と化しているスマートフォンの登場により,手のひらの上で次々に更新される膨大で無限大な情報を共有できます。誰もが“自由”にそれらの情報を得ることができる一方で,自分が興味(好み)ある情報“だけ”で知的環境を形成することも可能となっています。言い換えればいまの時代,知識(教養“的”物知り?)そのものは必ずしも個人の頭の中に貯めておかなくてもいいのかもしれません。このような生活環境では,むしろ獲得した知識(情報)を“適切に”選び出せるための視点と“知性”や“感性”,それらの知識(情報)を問題解決に活かすための柔軟な思考力と行動力という点が益々重要となってきます。
勝小吉の自伝「無酔独言」のなかに,「数巻の書物を読んでも心得が違うと野郎の本箱字引になるから,ここを間違わぬようにすべし」とあります。学んだ知識を生きたものとしなければ,ただ知識が詰まっているだけの本箱でしかない,ということですが,本学大学院がこの心得を学べるひとつの場となれるようにしたいと考えています。
