令和6年度(2024年度)後援会ドリームプラン奨学金 採用 |
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小さな命に届け!「手のひらサイズの産着作り」
家政学部 服飾美術学科 2年 K.M.
(所属・学年は活動当時のもの)
応募の動機
私は双子として産まれました。通常より小さく産まれた為、出生時は医療的ケアが必要だったそうです。生い立ちについて伝えられた際、ここまで成長できたことへの安心と同時に、小さく産まれた赤ちゃんや救うことができず旅立ってしまった赤ちゃんへ何かできることはないかと考えました。
新しい命の誕生はとても喜ばしいことであり、かけがえのないものです。しかしその反面、体の機能が未熟な状態で生まれてくる「未熟児」や2500g未満で出生する「低出生体重児」、流産・死産で亡くなってしまう赤ちゃんなど、赤ちゃんが誕生する形は様々なのです。
手のひらに乗ってしまうほどの小さな赤ちゃんは着られるサイズの服が少なく、裸にオムツだけの状態で治療を受けていたり、ガーゼやタオルだけで包まれていることがあります。また既製品では小さな赤ちゃんの為の服はあまり作られておらず、販売されていません。このような現状を考え、小さなサイズが必要な赤ちゃんの為の、手作りの産着とおくるみを製作し、病院に無償で寄付したいと考えました。そのような赤ちゃん達の成長・旅立ちを衣服製作を通じてサポートし、皆で笑顔溢れる時間を過ごしてほしいと思ったことが大きなきっかけです。小さな赤ちゃんにぴったりの服を着せることで、赤ちゃんの健やかな成長・旅立ちを手助けする服を届けたい。この私の小さな願いが届いてほしい、と思い応募をいたしました。
活動内容
〜製作過程〜
1.生地選択
産まれたばかりの赤ちゃんは肌が敏感な為、産着に使用する生地や縫製方法には特に注意しました。生地は肌あたりの良い、綿100%のダブルガーゼを使用しました。取り込んだ空気を2枚のガーゼによって留めておくことが出来る為、保温性も高まる特徴があります。また適度な通気性を保つことができ、汗や身体の老廃物が出ても素早く水分を放出する為、赤ちゃんが快適に過ごすことができます。また綿素材なので、お手入れもしやすいです。おくるみの裏地には吸湿性・速乾性に優れているタオル地を使用しました。副資材で使用したバイアステープや綿テープも、綿100%の柔らかい素材を使用しました。
使用する布の柄は、淡い色を中心とした可愛らしい柄を揃えました。男女どちらも着用できる様な、ジェンダーフリーな色・柄も取り入れています。赤ちゃんが更に元気に、家族や看護者が明るい気持ちになれる様な明るい印象の生地を選択しました。おくるみと産着のコーディネートも楽しんでいただけたらと思います。
型紙も自分で製図をしました。肩のところで縫い目がこない様に、型〜身頃までが繋がるように工夫をし、作図しました。


2.縫製
敏感な赤ちゃんにも安心して着用してもらえるよう、産着は手縫いを主として製作をしました。ミシンで縫製をすると縫い目が固くなってしまう為、肌あたりが悪くなってしまいます。手縫いで縫製することによって、着用した時に体に馴染みやすく、温かみのある風合いになります。
縫い代は全て表側に倒しました。縫い代が直接肌に触れないための工夫です。また縫い目の糸も直接肌に触れない様、「三つ折り絎け」を行いました。縫い目が内側に隠れ、見た目もすっきりとします。とても丈夫な縫い目なので、洗濯や赤ちゃんの身動きに耐えられます。三つ折り絎けは、1年次の和裁の授業で浴衣を製作した際に、師範して下さった縫いの技法です。授業で習ったことを産着の製作で活かすことができ、嬉しく思います。
衿ぐりの布端は、ガーゼ素材のバイアステープで始末しました。カーブに沿って包むことができ、より丈夫な仕上がりになります。バイアステープの色も様々な物を使用し、全体の良いアクセントになっているかと思います。


3. 仕上げ
針や糸くずが残っていないかを注意して仕上げを行いました。最後の一針を縫う時は、「元気ですくすく成長しますように」と願いを込めました。
完成した産着とおくるみは、一つひとつ透明の袋に入れラッピングを行いました。また、産着を受け取っていただいた方へのメッセージカードも添えました。家政大でのドリームプランでの活動や私が産着を製作した思いなどを伝えることができたと思います。最後に全ての産着をバスケットに入れ、皆の元へ届ける準備が整いました。




〜病院への提供・寄付〜
健康科学部看護学科の鈴木幹子先生のご協力の元、「市立青梅総合医療センター」と「独立行政法人 国立病院機構 埼玉病院」に産着を提供・寄付することができました。提供の手段は、鈴木先生・看護学科の先生方に代理でお願いしました。実際に私が手渡しで寄付し、産着を製作するきっかけや思いについて伝えることができたら更に良かったと感じます。しかし提供した際の写真を見た際に、製作した産着が皆の手に渡り、沢山の温かい気持ちを生むことができているのだな…と実感をしました。私の伝えたい思い、願いが届いた瞬間でした。



今後の目標
小さな産着作りから病院への寄付までを通して、低出生体重児や死産、医療的ケアが必要な赤ちゃんへの認知を深めていきたいと思います。人それぞれの様々なライフステージの中で命の大切さを再認識し、皆が支え合って出産・子育てを支援していける様な環境を作ることが目標です。大学卒業後、どの様な人生を歩んでも、産着を製作して沢山の笑顔を届けられたことは、大切な自分の糧になり、忘れられない思い出になるでしょう。そして産着を届けた赤ちゃんが、元気に成長してほしい。それが私の一番の願いです。
最後に
産着を製作する際、「この産着を着る子が少しでも少なくなれば良いな..」と辛く感じることもありました。しかし、この服を着て元気に育ってほしい、皆が温かい気持ちになってほしいと願いながら一針一針心を込めて縫いました。そして私が製作した産着が、グリーフケアや希望を与えるきかっけになっていただけたらと思います。
服飾美術学科に所属し日々衣生活を学んでいる私が、産着を製作するという形で活動を行うことができ、とても嬉しく思います。授業と両立しながら多くの量を製作することは、決して楽なことではありませんでした。提供する際、自分の身から産着が離れた瞬間は安堵感と共に、寂しい気持ちが込み上げたことを思い出します。
ドリームプラン奨学金をいただけたお陰で、温かい気持ち・沢山の笑顔を届けることができました。最後になりますが、私の願いをご支援していただいた東京家政大学後援会の皆様、そして活動をサポートして下さった健康科学部看護学科の鈴木幹子先生に感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。