令和6年度(2024年度)後援会ドリームプラン奨学金 採用 |
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子どものための物語絵本の制作および絵本カフェでの発表・販売
児童学部 児童学科 3年 F.U.
家政学部 造形表現学科 3年 O.C.
(所属・学年は活動当時のもの)
応募の動機
私は元々、絵本をはじめとする児童文化財に強い関心があり、大学入学前から、いつかは自分でも絵本製作に取り組んでみたいと考えていた。大学2年時の保育実習を通して、子どもにとって絵本がどれだけ身近で心惹かれる存在であるのかを改めて感じ、その思いはさらに強固なものとなった。
しかしながら私は、子どもを絵本の世界にいざなう、魅力的な絵を描くスキルを持ち合わせていなかった。そんな折、高校時代からの友人である造形表現学科のOに「絵本を作ってみたい」という思いを話したところ、賛同を得られ、児童学科と造形表現学科、それぞれの学びを生かした絵本製作を始めることとなった。ドリームプラン奨学金の存在を知った時、なんの知識も後ろ盾もない私たちが、完全オリジナル絵本を出版するという夢をかなえるためには、またとないチャンスだと思い、応募した。
活動内容
児童学科と造形表現学科、それぞれの学びを生かした、子どものための物語絵本を製作。2024年10月26日(土)・27日(日)に行われた緑苑祭にて、読み聞かせの実演および販売を行った。
絵本『すきずきおむすび』基本事項
・テーマ:日本の伝統的な食文化 多様性の尊重
・対象年齢:読んであげるなら/5歳児から 自分で読むなら/小学校低学年から
・サイズ:210㎜×210㎜(ソフトカバー版、ハードカバー版共通)
あらすじ:
実り豊かな「こめのまち」に、うまいもん冒険家のパン=ブレッドさんがやってきた!こめ将軍のお屋敷で食べた「おむすび」をいたく気に入ったパン=ブレッドさんは、「このまちで1ばんおいしいおむすびが食べたい」といいますが……?
テーマの決定
子どもにとって身近なテーマ(衣食住、遊び、動植物など)の中から、文化祭という場と最も相性の良い「食」をメインテーマとし、特に日本の伝統的な食文化として「おむすび」を取り上げることにした。「おむすび」は、多くの子どもたちが日常的に食べる、最もなじみ深い日本食のひとつであるため、明確なイメージを持ちながら、物語を楽しむことができるのではないかと考えた。また、絵本を読んだ子どもが調理に興味を持つことも想定し、対象年齢として設定した5歳~小学校低学年の子どもでも気軽に作れて、なおかつバリエーションも豊富な「おむすび」を大きく取り上げた。
絵本製作について
2人の間で何度もやり取りをしながら製作を進めたほか、本学児童学科に在籍する児童文化に造詣の深い先生方に意見を求め、改良を行った。
児童学科F……シナリオライター、全体的な企画進行、緑苑祭当日の読み聞かせなどを担当。
造形表現学科O……イラストレーター、チラシ・グッズ等作成、緑苑祭当日の売り子などを担当。
テキストについて
読み聞かせをした際に面白い音になるように、オノマトペやだじゃれなどの言葉遊びを積極的に使用した。キャラクターが一人ひとり出てきて話す場面では、テキストに共通の型を採用して統一感を出しながらも、話し方や言葉の選び方で、個々のキャラクター性の違いを際立たせる表現を意識した。
絵について
それぞれのおむすびの特徴をキャラクターに落とし込み、唯一無二の世界観を創り上げることを心がけた。キャラクターにはそれぞれに異なる色をメインに使用することで、カラフルで多様な個性を表現した。また、それぞれのページで画風を変えたり、テキストのサイズや配置を個別にデザインしたりすることで、視覚的に楽しく、次々ページをめくりたくなるような工夫を行った。
緑苑祭当日について
日時:2024年10月26日(土)、27日(日) 10:00~16:00
場所:百周年記念館前わいわい通り 外テント
団体名:絵本カフェ結
販売物:
・絵本『すきずきおむすび』(ソフトカバー版) 1,000円
・オリジナルシールセット 300円
・カフェコクリココラボセット 300円
・おむすびクッキーセット 200円
・栗饅頭 100円
・和風スイートポテト 200円
・日本茶(和紅茶、ほうじ茶、玄米茶) 各100円
備考:
・絵本『すきずきおむすび』の世界観に合わせ、和菓子・日本茶を楽しめる和カフェをコンセプトに運営。東京家政大学緑窓会カフェコクリコにご協力いただき、抹茶あずきカップケーキのほか、オリジナル商品「おむすびクッキー」を製作してもらった。
・絵本に興味を持ってもらうため、テントの前を通りかかった子どもたちに、作中に出てくるキャラクターたちのステッカーをランダムに配布し、宣伝を行った。
・テント内にて絵本の読み聞かせを行ったほか、絵本のキャラクターを模したボール投げのミニゲームを行った。
・緑苑祭児童学科・保育科企画「みんなでプレイメーキング!OMOSIROランド」ブース内に、絵本『すきずきおむすび』を置いていただき、来場者が自由に手に取って鑑賞できる環境を用意した。
品名 | 値段 | 1日目 | 2日目 | 販売数合計 | 売り上げ金額 |
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絵本『すきずきおむすび』 | 1,000円 | 25冊 | 20冊 | 45冊 | 45,000円 |
(絵本『すきずきおむすび』)※1 | 500円 | 12冊 | 12冊 | 6,000円 | |
オリジナルシールセット | 300円 | 1セット | 0セット | 1セット | 300円 |
カフェコクリココラボセット | 300円 | 50セット | 50セット | 100セット | 30,000円 |
(おむすびクッキーセット) ※2 | 200円 | 9セット | 9セット | 1,800円 |
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栗饅頭 | 100円 | 24個 | 25個 | 49個 | 4,900円 |
和風スイートポテト | 200円 | 15個 | 15個 | 30個 | 6,000円 |
日本茶 | 100円 | 2杯 | 18杯 | 20杯 | 2,000円 |
※2 2日目のみ販売。


緑苑祭後の絵本の活用と寄贈
児童学科Fは緑苑祭の直後、10日間の幼稚園実習に臨んだ。そこで5歳児クラスに入った際、時間をいただき、絵本『すきずきおむすび』の読み聞かせを実践した。子どもたちは、まず「本屋さんにも図書館にも置いていない、ここでしか読めない絵本であること」「F先生(実習生)が作った絵本であること」という特別感に惹かれた様子で、集中して絵本を見ていた。読み聞かせ後には、「すごくおもしろかった、また読んで」「僕、しゃけおにぎりが好き」などの声が聞かれたほか、数日たっても「家でも読みたい。○○ちゃんに売ってよ」と声をかけてくる子もいたため、実習最終日、5歳児クラスに絵本を1冊寄贈した。幼稚園においては、多くの子どもたちによって長い間読み継がれることを考慮し、ハードカバー版を寄贈した。
現在、幼稚園、母子生活支援施設、小学校の3か所にハードカバー版絵本を寄贈している。
ドリームプランを終えて
今まで漠然と頭の中にあった「自分で絵本を作ってみたい」という夢を、それぞれの能力を最大限活かして形にできたこと、高校時代から多くの時間を共に過ごしてきたかけがえのない友人とともに試行錯誤し大きな目標を達成したことは、私たちにとって大変意義のあることだった。自分たちの想いを、表現を、誰かに届けることができたという実感は自信に繋がり、クリエイターとしての自分を支える大切な経験になったと思う。
また、作品を届けたい人に届けるためのマーケティングや、商売として成立させるための資金管理など、絵本製作そのもの以外にも多くの学びを得られた。この経験を、私たちの今後の創作活動、表現活動に活かしていきたいと思う。