教育・研究機関としての使命

 

教育・研究機関としての使命

環境問題への取り組みとして、建物・設備・機器の対策を行うことは、どの企業・団体でも必要なことです。
さらに本学には、教育・研究機関として、新しい知見の追求、知識の普及啓蒙、人材の育成などの面でも環境問題に取り組む使命があります。
ここでは、幼稚園から大学院まで、学部・学科を問わずに環境教育に取り組んでいることをご紹介します。

附属高校・中学・幼稚園における教育 田んぼと家政ビオトープ

附属の幼稚園・中学・高校では、生活体験、授業、オリエンテーションなどを通じ、地球環境や生活環境をまもることの大切さを教えています。
幼稚園では、小さな田んぼを作り(右上)、食べ物がどうやってできるのかを知ることにより、食べ物を大切にする心を養うなどの教育を行っています。
中学校・高等学校では、理科・社会の教科の中で環境問題について学ぶほか、ビオトープを活用した様々な活動を行っています。前述のように本学ではキャンパス全体をビオトープと考えております。キャンパス内には、一般的な花壇・芝生として整備している区域もありますが、その対極として、なるべく自然環境を模して池を作り野草を植栽した区域、「家政ビオトープ」も(右中)あります。
家政ビオトープでは、どのような生物が生息しているかを定期的に調査し、観察実験の材料を採取するなど、主に中学校の生態系の学習に活用しています。また、池の循環ポンプには太陽電池を使用し(右下)、自然エネルギー利用の教材としても役立っています。2010年は2年に1度開催される「全国学校ビオトープコンクール」で銀賞を受賞することができました。(クリックするとPDFファイルを表示します

環境教育は全ての学部・学科で

本学は環境分野に特化した環境教育学科を設置していますが、環境問題は一部の学生だけの課題ではありません。家政学と環境問題の密接さは「はじめに」で述べたとおりですが、学部を問わず、全ての学生が環境問題について学ぶことが必要であると考えています。
たとえば人文学部でも、周囲環境が心にあたえる影響、食物やエネルギーを大切にする習慣を身につけさせる幼児教育、映画「不都合な真実」のように多くの人に強い印象を与える文章や映像、芸術作品の力、国際的な環境問題の解決をはかるためのコミュニケーションなど、環境問題に立ち向かうための多様な手段があります。そのため、「自分の専門分野で環境のために何ができるか」を「全ての」学生に意識させることが環境問題解決のために重要なのです。
そのため、大学の共通教育(旧 一般教養)課程では「自然と環境」をはじめとする環境関連の講義があり、学部を問わず受講できます。講義では、地球温暖化とその防止、私たちの暮らしと化学物質などについて取り上げ、常に環境を意識して行動できる学生の育成をめざしています。また、全学部から希望する学生を募り、夏休みのオーストラリア クーインズ大学環境保全・英語研修(右写真)を実施しています。

環境分野のスペシャリストの育成

「環境教育学科」は生活環境・地球環境に関わる問題を研究し、スペシャリストを養成する学科です。環境情報専攻として発足した1992年以来、現在に至るまで、多くの人材を輩出しています。
環境教育学科の学生には、次のような環境に関わる資格を取得するよう指導しています。国家資格公害防止管理者(1~4種)、危険物取扱者、毒物劇物取扱者、有機溶剤取扱者など合計で約210人が取得しています。また、東京都Ⅰ種公害防止管理者の資格は、環境教育学科の指定科目を履修、単位を取得すれば資格が得られ、これまでに約1,151人が資格を取得し、それぞれの分野で活躍しています。
また、3号館屋上には気象庁のアメダス相当の気象観測装置、120周年記念館屋上には紫外線計と大気の混濁度を測定する計測器を設置しています。オゾン層破壊により問題になっている有害な紫外線が、大気の状態や季節によりどのように変化しているかをリアルタイムで測定し、研究しています。また、その紫外線が人体にどのような影響を与えているかについても研究を行っています。
学内の講義・実験にとどまらず、フィールドワークも重視し、手賀沼の水質調査(右下写真)なども毎年実施しています。
シラバスなど 「環境教育学科」の詳細については下のボタンをクリックしてください。

重金属の分析

有害な紫外線量の測定

紫外線が皮膚に与える影響の研究

手賀沼の水質調査

環境家計簿

学外への普及啓蒙活動の一環として「環境家計簿」というコンテンツを作成しました。
項目の使用量を入力することによって、家庭でのCO2排出量が、簡単に計算できます。また、地球にやさしい暮らしをするためのヒントも載せています。
下のボタンをクリックして、ぜひお試し下さい。

授業・研究におけるトピックス

ここでは本学の授業や研究の中から、環境と関わりが深いものを取り上げてご紹介いたします。

2010年11月 客人をもてなす空間 ・・・・たまには野外でお茶会を
2010年11月 海外派遣研修(タイ・インド) 22日間の貴重な体験
2010年11月 消し忘れチェック 省エネに関するフィールドワーク

プラスチックの油化装置

プラスチックは家庭ゴミの約40%(容積比)を占めています。そのプラスチックをゴミとして処理しようとすると、かさ張る、分解が遅い、焼却するとダイオキシンが発生する・・・などの問題が発生します。しかし、きちんと分別すれば、資源として再利用することができます。
右の写真の装置は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンのプラスチックを油に変える装置です。ケミカルリサイクルと呼ばれるリサイクル手法の一つになります。この装置を通して、ゴミの分別やリサイクルの重要性について学習します。

油化装置

卒業研究で作成した風車

環境教育学科の卒業研究として、学生の設計による手作りの風力発電装置を開発し、屋上に設置してその性能を調査しました(クリックすると調査結果のPDFファイルを表示します)。
今回は風力という再生可能なエネルギーを得るための手段を学んだわけですが、講義だけで学ぶより、実際に手を動かして何かを作ったり、調査したりする経験は大変貴重です。学生達は環境問題に取り組むための手応えを感じ、自信を持ってくれたのではないかと思います。

学生が手作りした
風力発電装置(左)と
発電状況の測定風景(上)

調理における省エネルギー

家政学と地球環境の関係は多岐にわたりますが、最も身近な分野として、加熱や冷却にエネルギーを使用し、排水やゴミにも大きく関わる「調理」と省エネルギーについて取り上げます。
本学の長尾教授らによる研究では、グラフのように何も考えずに調理を行った場合と、調理における省エネルギーについての講義を聞いた後では、エネルギーの使用量が大きく異なることがわかりました。また、経験が長く手際のよい主婦に比べ、調理に不慣れな学生は改善の余地が多いため、改善率が大きいという結果も得られています。これらのことから、正しい調理法を学習することが、味や栄養のみならず、省エネルギー面でも重要であることがわかります(詳しい内容については右のボタンをクリックし、論文をご参照下さい)。

「環境教育・環境学習インストラクターセミナー」の開催

環境省登録「環境カウンセラー」は、環境省の審査を経て登録できる人材登録制度ですが、審査を受けるには環境関連の実務経験、環境保全活動などの実績が必要です。その前段階として、「ECU環境教育・環境学習インストラクター認定」があり、この認定を受けた後、環境関連の実務を経験することが、「環境カウンセラー」の審査に必要な実務経験を積む方法の1つです。
「ECU環境教育・環境学習インストラクター」の認定は、環境省の認定を受けた環境カウンセラー全国協議会(ECU)が主催するセミナーを受講し、論文審査を経て得られます。2010年は10月2,3日に学内で行われたセミナーには,本学の学生が50名受講し、論文審査を経てこの資格を取得しています。

緑のカーテン

学生食堂の窓際に、2009年から緑のカーテンを作っています。緑のカーテンは、夏の日差しを和らげ、壁や窓の温度上昇を防ぎ、葉の蒸散作用で、風が通り抜ける際に周囲の気温を下げ、エアコンをつけなくても涼しくなります。

2009年にはゴーヤを植えましたが、2010年も、環境教育学科のセミナーの授業を受けている3年生と、環境サークル「ジアス」の部員が一緒になってアサガオの苗を植え、立派に育ち花を楽しむこともできました。
緑のカーテンは、エアコンに係わる電力や二酸化炭素を削減でき、さらに植物を育てる楽しみを味わえるなど、多くのよい点があります。

2009年のゴーヤ苗
植え付け風景(上)

2010年のアサガオの
繁茂した状況(左)

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