2003年 企画展「語る人形たち」
展示趣旨
子どもの健やかな成長を願わない大人はいない。しかし、最近子どもたちのうえに暗い影を落としている事件を耳にするにつけ、将来の世の中を背負う子どもたちの悲鳴が、聞こえてくるような気になる大人も多いことであろう。
このような社会の中で、子どもだけでなく家庭、特に育児者である母親の健全な心は、欠くことができない。その一つに家庭における絵本の読み聞かせがあるが、これは非常に重要な要素と思われる。
特に現代の家庭内に入り込んだ映像は、時間を忘れさせるほど子どもを楽しませてくれるが、映像と それを見ている子どもとの間には、会話がほとんど生まれない。それに偏ることは、子どもの自発的な思考や行動が 阻まれ、受動的な人間になるという 懸念さえある。
幼い頃からの絵本の読み聞かせの中での親子の会話、幼い頃に「おままごと」の中での人形との会話 など、会話の楽しさは、成長するに従い、幼い子ども同士の会話から、学生同士への会話、大人になってからの社会生活や家族との会話等とその重要性は増し、その人となりを多彩にしていく。
このような課程の中から会話の楽しさが生まれ、これがお互いの信頼に繋がる。人がもって生まれた会話の楽しさを現代人に再認識してもらい、もっと大切にし てもらいたいと願う。
これらの事柄は、外国においても童話や民話・人形劇などに現れ、語られてきたものの中には、子ども の心を揺さぶるほどの名作が数多くある。
今回の展示は、人形の形態にこだわらず、それを通して人と人との会話の楽しさ、お互いの理解に欠くことのできない「語る」について考えてみたい。
展示内容
- 人形劇にみる芸術的な感性をはぐくむ人形たち
- 青い目の人形と日本の答礼人形
- 幼稚園・小学校おける人形劇の人形たち
- 東南アジアの語る影絵芝居人形たち
(インドネシアのワヤン・クリ人形、タイのもの) - 子どもの頃に語りかけて遊んだ抱き人形
- 奈佐原文楽(栃木県の文楽人形芝居)
- 吉澤文楽人形の首(かしら)一式(栃木県葛生町教育委員会)
開催期間:平成15年10月21日(火)~11月15日(土)