作業療法学専攻の鈴木誠教授が第35回大阪府作業療法学会に教育講演の講師として出席します.

スクリーンショット 2021-12-03 20.04.35.png作業療法学専攻の鈴木誠教授が第35回大阪府作業療法学会に教育講演の講師として出席します.

「シングル・ケース研究デザインによる作業療法効果推定」

https://www.osaka-ot-gakkai.jp/education/10.html


作業療法における支援では,対象者と作業療法士が一対一の不連続な試行を反復して実施する.そのため,現在行っている支援が目の前にいる対象者に対してどの程度の効果を有しているのかを把握することが,支援目標や支援内容の設定および変更のための重要な手続きとなる.
作業療法において広く用いられているグループ研究デザインでは,説明変数(原因)と目的変数(結果)の因果関係がどの程度確かなのかという推論(内的妥当性)と,因果関係が今回の対象者とは異なる対象者にどの程度一般化できるのかという推論(外的妥当性)がなされる.つまり,グループ研究デザインでは,サンプルデータによる結果の母集団への一般化が推論されるため,母集団全体に対して支援効果がどの程度あるのかという情報は得られるものの,目の前にいる対象者に対して支援効果がどの程度あるのかを判断することは困難である.そのような現状の中,近年ではシングル・ケース研究デザインが注目されるようになってきた.
シングル・ケース研究デザインでは,対象者1名の反応を一定期間システマティックに反復計測することによって,個人への支援効果が推論される.このようなシングル・ケース研究デザインを用いたデータ解析では,ローデータを直接確認できる,個々のデータの時系列変化が詳細に分かる,対象者に支援効果をフィードバックすることができるという長所がある.しかし,いかに統制された研究デザインを用いて対象者の行動をシステマティックに反復計測したとしても,計測誤差やトレンドを含む小サンプルの時系列データから現在および将来の状態を正確に予測することができなければ,計測結果の内的妥当性は保証されない.この点が作業療法の臨床にシングル・ケース研究デザインを適用する際の大きな課題となっている.
本教育講演では,シングル・ケース研究デザインを行うためのデザインの選択,データ計測,データ解析の方法について紹介し,作業療法において対象者の現在および将来の状態をいかに予測し,支援効果の判定を行うかということについて考えたい.

   
     
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