リハビリテーション学科の教員らの研究論文が,国際誌に掲載されました

リハビリテーション学科作業療法学専攻の教員らの研究論文が,国際誌(Neuroreport)に掲載されました.

Suzuki M, Suzuki T, Tanaka S, Sugawara K, Hamaguchi T. Corticospinal excitability related to reciprocal muscles during the motor preparation period: effect of movement repetition. Neuroreport 2019; 30(12): 856-862.

短距離走のスタートの場面を想像してみてください.「位置について,よーい」のかけ声で空気が張りつめ,一瞬の静寂が訪れます.

この静寂の間,人の脳はどのような準備をしているのでしょうか.

近年では,運動の開始に近づくにつれて運動に関わる筋(主動筋)をコントロールしている脳の興奮性が低下することが知られており,これはフライングを回避するための脳の反応と考えられています.例えば,膝を伸ばす時には腿の前面にある筋が主動筋ということになり,「よーい」から「ドン」の合図までの間,この筋をコントロールしている脳の興奮性が一時的に低下するということになります.

一方,腿の背面にある筋は拮抗筋と呼ばれます.この筋が収縮すると膝が曲がるため,膝を伸ばす際には,ブレーキになってしまいます.つまり,素早く膝を伸ばすためには,膝の背面にある拮抗筋を緩ませる必要があるわけです.

では,「よーい」から「ドン」の合図までの運動準備の間,主動筋と拮抗筋をコントロールしている脳の活動はどうなっているのでしょうか? また,このような運動準備中の脳の活動を,私たちは練習によって変化させることができるのでしょうか?

そこで私たちは,反復運動が運動準備中の脳活動に及ぼす影響を調べることにいたしました.実験の結果,主動筋と拮抗筋をコントロールしている脳の興奮性がともに運動開始に近づくにつれて減少しました.また,運動を反復すると,拮抗筋をコントロールしている脳のみに運動準備中の興奮性低下が認められなくなることが分かりました.このことは,「よーい」から「ドン」の合図までの運動準備中の脳の活動が,反復練習によって変化することを示唆しています.

作業療法では,様々な運動が練習の対象になります.今回得られた知見をもとに,人がスムーズに運動を開始するための練習方法について検討したいと考えております.

論文の概要は,下記のサイトでみることができます.
https://journals.lww.com/neuroreport/Abstract/2019/08020/Corticospinal_excitability_related_to_reciprocal.9.aspx

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鈴木誠
suzuki-mak@tokyo-kasei.ac.jp
   
     
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