2010年 特別企画展展示風景

 

2010年 特別企画展「渡辺学園 裁縫雛形コレクション」展示風景

展示構成

第1部 裁縫雛形とは

裁縫雛形(さいほうひながた)(以下、雛形という)は、明治から昭和にかけて本学の学生が教育課程の中で製作した、衣服や生活用品等のミニチュア標本です。校祖 渡邉辰五郎(わたなべたつごろう)が明治7年頃に考案した「雛形尺(ひながたざし)」という物差しを使って製作され、画期的な裁縫教授法として教育界の注目を集めました。

第1部では辰五郎による裁縫教授法や、雛形尺とその縮尺などについて詳しく紹介しています。

第2部 雛形が伝える衣文化・衣生活

実用品である衣服は、着用によって消耗し、また素材自体が長持ちしないため、後世に残りにくい資料です。一方、雛形は ①実際には着られない ②小さくて保管・移動しやすいという理由から、比較的よい状態で今日まで伝わり、当時の衣服の形態や縫い方等を示す貴重な資料となっています。

有職類(ゆうそくるい)

職業服・仕事着

辯護士禮服(べんごしれいふく)・帽子 明治38

弁護士が法廷に出るときに、平服の上に着た。明治26年に制定。

生活用品

大夜着(おおよぎ)大正12

着物の形をした寝具で、おもに江戸末期から昭和初期にかけて今の掛け布団のように使われた。布団に比べ、首や肩の辺りがしっかりと覆われ、防寒に優れている。

第3部 学びの証 ―教育史資料として

卒業までの製作点数 高等師範科3年間での製作点数 98点

裁縫用具

明治・大正・昭和期使用の裁縫用具。
全て重要有形民俗文化財

第4部 今、「雛形」で何を学ぶか

ここでは、今日の衣服製作に取り入れられた「雛形」を紹介し、雛形の意義を考え、今後の活用の道を探っていきます。

《海水浴着 復元》雛形をもとにして復元された明治時代の海水浴着

《「小さく作る」ということ》現代の衣服製作におけるミニチュア衣装の例 などを紹介

近代日本の服飾

和装

洋装

改良服

改良服女物・改良袴 明治38

渡邉辰五郎考案。和服の優美さを保ちながら、より機能的になっている。上衣は、袖口に紐を通しつぼめられるようになっている。下衣は、帯がいらず、着物の裾の乱れを気にせず歩けるように、スカート状の袴をはく。

多種多様な製作品

雛形には、実生活に必要な服だけではなく、伝統的な衣装、職業服等の特殊な用途に限られた服、外国衣装もみられます。多種多様な製作品からは、幅広い知識と教養を身につけさせることで、裁縫教師をはじめとする、服飾文化の担い手を育てようとした意識の高さがうかがい知れます。

雛形は、教師が授業で見本として使う場合もありましたが、大部分は学生が課題として製作したものです。出来上がった雛形には、所属・学年・品名を書き入れて提出し、合格のしるしである検印を押されると次の課題に進むことができました。

雛形と各種の提出物からは、当時、厳しくも信用のおける教育法として世に知られていた渡辺式裁縫教授法の充実ぶりがうかがえます。