新入生の皆さま|2026(令和8)年度入学式学長式辞

 

新入生の皆さま|2026(令和8)年度入学式学長式辞

新入生の皆さん、ご家族・ご親族の皆様、ご入学、誠におめでとうございます。新入生の皆さんはもちろん、皆さんを育て、支えてこられたご家族・ご親族の皆様も、大変お喜びのことと存じます。東京家政大学の教職員を代表して、お祝いの言葉を申し上げます。

本学の創設は、明治14年(1881年)にまで遡ります。江戸時代が終わり、近代国家へと歩み出して間もない当時、社会における女性の地位は極めて低いものでした。女性は、法律的にも経済的にも夫や父に従属し、学ぶ機会、自らの意志で道を切り拓く自由は極めて限られ、選挙権も与えられていませんでした。そうした困難な時代にあって、本学の創設者、渡辺辰五郎先生は「女子の自立」を強く願い、裁縫の技術とその教授法を伝える「和洋裁縫伝習所」を設立されました。東京湯島に誕生した、この和洋裁縫伝習所こそが東京家政大学の起源です。厳しい制約の中で、手に職を持ち、自らの足で立つ「自主自律」が本学の原点となり、「自主自律」は、東京家政大学の建学の精神として、今日まで145年間にわたり大切に受け継がれてきました。

さて、時代は移り変わり、女性の社会進出は大きく進みました。しかし、私たちの前には新たな課題が立ちはだかっています。SNSの普及は情報の伝達を劇的に速めた一方で、顔の見えない相手への不寛容や、異質な意見を排除しようとする「分断」を生んでいます。また、生成AIをはじめとする技術革新は、私たちの生活を便利にする一方で、「人間としての知性とは何か」「真実とは何か」という根源的な問いを突きつけています。多様な情報が手に入りやすい時代でありながら、私たちは自覚を欠くまま、自分に都合の良い情報だけに囲まれ、他者への想像力を欠きやすい環境に置かれているのかもしれません。

このような不確実な時代だからこそ、「自主自律」は、ひときわ重要です。現代における「自主自律」とは、人に頼らず一人で生きていくことではありません。自分自身の可能性を信じ自らの知性と技を磨くだけでなく、他者の尊厳を認め、自他の可能性を広げ、より良い社会を築くために手を取り合うこと。すなわち、「個の自立」と「他者との共生」の両立こそが、いま追求すべき「自主自律」であると、私は信じています。

また、本学が生活信条として掲げる「愛情・勤勉・聡明」は、私たちが進むべき道を照らす光となります。他者を思いやる「愛情」、地道に努力を積み重ねる「勤勉」、そして、物事の本質を見極める「聡明」。これらは決して古びた道徳ではありません。むしろ、激動の現代を生きる私たちが、自らの手で定義し直し、体現していくべき生きた指針なのです。

東京家政大学は、伝統を大切にしつつ、社会の変化に対応し進化を続けています。今年度から「共創デザイン学部」、「文化情報学環」、「社会デザイン学環」を新たに立ち上げ、「心理カウンセリング学科」は「マネジメントコース」を加えコース制を始めました。既存の学部・学科においてもまた、皆さんが次代を創る主体として活躍できるよう、絶えず教育課程の改善を続けています。

多様な背景を持つ人々が互いの違いを認め合いながら共に学ぶ。そして、教室での学びに留まらず、実践的な経験を通じて、それぞれの「知と技」を形づくる。東京家政大学は、一人ひとりの成長を全力で大切にする大学です。大学は単に知識を受け取るだけの場所ではありません。皆さん自身がこのキャンパスで何を学び、誰と出会い、どう行動するかによって、その価値が決まります。4年後に皆さんが卒業の日を迎えるとき、「この大学に入って本当によかった」と心から思えるよう、私たち教職員は全力で皆さんを支えます。皆さんもまた、この大学の歴史を共に創り上げる主体として、今日からその一歩を踏み出してください。

結びに、皆さんの学生生活が、みのり多く、希望に満ちたものとなることを心より願い、私の祝辞といたします。

ご入学、本当におめでとうございます。


令和8年4月3日
東京家政大学 学長
井上 俊哉

狭山キャンパス 入学式

板橋キャンパス 入学式

狭山キャンパス 学内風景

板橋キャンパス 学内風景