社会デザイン連続講座 第3回 観光体験をデザインする! "ガストロノミーツーリズム"
社会デザイン学環では、導入教育の一環で「社会デザイン連続講座」と題して、実践家に出会い、実践にふれ、社会課題やこれからの自分自身の進路・仕事を考える企画をおこなっています。
9月19日(土)に、「社会デザイン連続講座」を開催しました。
地域の食・人・風土を、旅の物語へ。
第3回となる今回は、株式会社 The Hidden Japan 代表の山科沙織氏をお迎えし、「観光体験をデザインする! ガストロノミーツーリズム」をテーマにご講演いただきました。山形県や東北地方を拠点に、外国人目線で地域の隠れた魅力を掘り起こし、持続可能な観光ビジネスを展開する実践的な取り組みについてご講演いただきました。
The Hidden Japan創業のストーリー
創業のきっかけは、山形のとあるコワーキングスペースでの、日系アメリカ人デレク氏との出会いでした。2015年にALT(外国語指導助手)として山形県鶴岡市に赴任した際、英語で「鶴岡」「山形」と検索しても地域の観光情報がほとんど出てこなかったそうです。
実際に現地を訪れてみると、豊かな自然や美味しい食べ物、人の温かさに魅了されました。
「これほど素晴らしい場所なのに、なぜ海外へ魅力が届いていないのか」という強い課題感を抱きました。
そこで、「ネイティブの視点から英語で情報を届ける観光メディアを作ろう」と意気投合し、インバウンド向けの『The Hidden Japan』を立ち上げたそうです。メディア開設から1ヶ月後には、記事を見て海外から実際に山形を訪れるという成果が生まれ、「発信によって地域に人を呼べる」と確信。その後、観光メディアから本格的な体験型旅行会社へと発展、法人化して現在に至ります。
魅力的な体験を組み合わせ、ストーリー性のある観光体験をデザインする
同社では、単なる観光地巡りにとどまらない「多様な旅のスタイル」を提供しています。
例えば、「オーダーメイド型ツアー」。
こちらはお客様のご要望やストーリーに寄り添い、完全にカスタマイズする旅行プランです。山形県の「山寺(立石寺)」で早朝に演出した感動的なプロポーズツアーなど、生涯の思い出となる体験を創出しています。
次に、「パッケージツアー」では、新潟と山形を巡る「職人の技に出会う旅」や、金沢・東京・山形を繋ぐ「サムライストーリーツアー」など、地域の歴史や文化を深く学ぶプログラムを展開しています。
また、地域密着の体験コンテンツも数多く手掛けられ、羽黒山の参拝ツアー、そば打ち体験、郷土料理「芋煮」づくり、雪下キャベツの収穫体験など、地元事業者と連携した体験プログラムを企画・販売しています。
このような事例をもとに、お客様のニーズに応じて一つひとつの体験(点)をつなげてストーリー性のある体験を作り、その土地・文化に根ざした資源を活用した体験をデザインするツーリズムのあり方を語っていただきました。
訪日理由ランキング 堂々の一位は「日本食」の魅力!
訪日外国人が日本旅行で最も楽しみにしているのが「日本食」です。講演では、単に料理を食べるだけでなく、その土地の気候風土・歴史・文化・生産者の思いに触れる「ガストロノミーツーリズム」の具体例が紹介されました。
例えば、Farm to Table。フルーツの収穫だけでなく、バーに持ち込み、カクテルを作る体験とともに味わう。収穫から食につなげるというように、見学・収穫・調理などが一続きになった観光体験が特徴的です。
山科さんは言います。「おいしかった」の、その先へ。
そうした魅力的な観光体験では、「現場でのリスク管理」と「多様なニーズへの柔軟な対応」が非常に重要であると山科さんは語ります。アウトドアや食体験には予期せぬリスクや配慮が求められます。同社ではプライベートツアーを軸に、天候悪化時には市場見学などへ切り替える「プランB(代替案)」を常に複数用意しているそうです。高額なオーダーメイドツアーでは、事前にオンラインで丁寧な打ち合わせを重ね、お客様の予算や要望を細かくヒアリングして理想のプランを作り上げていくそうです。そういったお客様とのコミュニケーションについても、学生たちが興味深く学べる時間となりました。
今回は、「食」や「地域・文化」の魅力を掘り起こし、ストーリーのある観光体験をデザインして、いま世界の人々を惹きつけている「ガストロノミーツーリズム」という新たなツーリズムのあり方を学びました。
このような「社会デザイン」の現場を学ぶ中で、将来、旅行業やフードビジネスへの就職を考えている学生だけでなく、その現場となる地域を、持続可能なツーリズムや地域活性化へとつなげて考えることができたのではないでしょうか。

(学生の感想)お客様のご要望に合わせて一からオーダーメイドでツアーを企画し、喜んでもらう姿勢に感動しました。
(学生の感想)自分自身、高校時代の修学旅行で海外に行った際、とても緊張した経験があるので、お客さんを安心させながら柔軟に対応するスタイルが素晴らしいと思いました。
(学生の感想)東北といえばラーメンのイメージが強かったけれど、農作業や料理体験などラーメン以外の多面的な魅力を知ることができ、自分も体験してみたくなりました。
(学生の感想)ツアーの計画を立てて満足するのではなく、万が一に備えて代替案(プランB)まで徹底的に考えておくということの重要性を感じました。
(学生の感想)単に食べるだけでなく、生産者のストーリーや作るプロセスに関わることで旅行の思い出が何倍にも深まるのだと感じました。
(学生の感想)アレルギーや宗教だけでなく、出汁や個人的な嗜好など食の多様性配慮について深く知ることができて、とても勉強になりました。






