東京家政大学

学長便り

2018.4.5

平成30年度狭山校舎入学式式辞(概要)
 
 今年の桜前線の北上は速く、桜で有名な稲荷山公園も、葉桜となっています。春は、やがて緑豊かになる狭山キャンパスの木々が、私たちと同じ生き物であることを実感させてくれます。
 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
 今日の良き日にふさわしく、春爛漫の中、入学式を挙行できますことを、ともに喜び合いたいと思います。
 本日ここに、新入生の皆さんを、「自主自律」を建学の精神とし、「愛情・勤勉・聡明」を生活信条とする、東京家政大学にお迎えしますことを、教職員一同、心から歓迎いたします。
 また、ご同席されている保護者の皆様、ならびに、ご関係の皆様に、心よりお祝いを申し上げます。おめでとうございます。
 また、ご来賓の皆様には、公務ご多用の中、ご臨席を賜り、誠にありがとうございます。心より御礼を申し上げます。
 本日、大いなる希望をもって、東京家政大学にご入学された新入生の皆様に、歓迎とお祝いの気持ちを込めて、大きく三つのお話をさせて頂きます。
 
 最初に、東京家政大学の歴史と伝統についてお話しします。
 本学は今年、創立137年になります。1881年(明治14年)、校祖・渡邉辰五郎先生(1844~1907)によって、東京湯島に、私塾として創立された、「和洋裁縫伝習所」に始まります。
 渡邉辰五郎先生については、近代日本における「教育家」の一人として、国立国会図書館のデジタルコレクション「近代日本人の肖像」のサイトでも、お写真とともに、紹介されています。「教育者」「教育家」としては、42名の方々が五十音順に掲載されていますので、すぐ前には、「吉田松陰」が掲げられています。
 そこに書かれている解説には、「裁縫教育に生涯をささげ、千葉県の長南小学校をはじめ、千葉女子師範学校、東京女子師範学校などで裁縫を教授し、文部省御用掛を拝命、私塾の和洋裁縫伝習所(後の東京家政大学)などを設立し、わが国女子職業学校の嚆矢となった」ということが書かれています。
 当時はまた、明治5年(1872)に学制が発布されたばかりで、近代日本の学校教育制度の取り組みが開始された時期です。明治8(1875)年における小学校の就学率は35.4%という記録があります。8年後の、明治16年(1883)でさえ、53.1%でした。
 そのような時代に、渡邉辰五郎先生は、裁縫術と裁縫教授の画期的な方法を創り出し、いち早く教科書をつくりました。裁縫雛形という、はじめに小型モデルともいうべき縮尺の作品を作り、それに従って目的の作品をつくる、という方法を用いて教えていました。そして、ただ裁縫ができるだけでなく、裁縫を教授できる、智徳の優れた、指導者、女性教員を育てようと、和洋裁縫伝習所を設立されたのです。
 その後、「東京裁縫女学校専門部」ができ、「東京女子専門学校」と改称します。これは、裁縫を高等な学術技芸として教授する、専門学校令によるわが国最初の学校でした。やがて、1930年(昭和5年)に渡邊学園が誕生します。
 第二次世界大戦の終戦の年である昭和20年に、現在の板橋校舎へ移転した後、昭和24年に東京家政大学・家政学部を設立し、翌年の昭和25年には東京家政大学・短期大学部を設立しました。
 東京家政大学の初期の学長である青木誠四郎先生は、児童心理学・教育心理学の学者でした。教育心理学を実践とむすびつけて研究され、前職であった文部省在職中には、学習指導要領を作り上げ、その編集を行った先生であります。
 青木誠四郎先生は、戦後日本の復興を女性の「自立」に見ていました。「日本人を幸福にするには日本の婦人がもっと幸福にならなければならない」と、先生のご講演をまとめた『若い女性』に書かれています。そして、「愛情・勤勉・聡明」の生活信条こそが、女性の「自律」につながるものと考えたと思われます。それは、建学の精神と同様、決して女性だけのものではなく、人間として必要な、普遍的価値を持つものであり、時代が変化しても変わらぬものであるといえます。
 その後、大学は、しばらく家政学部だけの単科大学でしたが、狭山キャンパスの用地を取得し、昭和61年に文学部を開学します。そしてその時から、総合大学の道を歩み始めます。また、両キャンパスに大学院も開設しています。平成19年には板橋校舎の臨地を購入し、キャンパスを拡大、文学部は人文学部として改組し、すべての学部・大学院が板橋校舎に集まりました。大学院も「人間生活学総合研究科」として生まれ変わりました。
 平成26(2014)年四月には、看護学部、子ども学部が、新たにここ狭山校舎に誕生し、東京家政大学は四学部をそろえる総合大学となりました。そして、つい先日、皆様の先輩である、第一期生を送り出すことができました。
 看護学科の国家試験合格率は、看護師99%、保健師94%、助産師100%でした。また、子ども学部の就職率は100%と、好成績を上げることができました。
 また、本年度より、看護学部を健康科学部に、学部名を改め、本日、看護学科の学生とともに、リハビリテーション学科の、作業療法学専攻・理学療法学専攻二専攻の学生を、お迎えすることができました。子ども学部・子ども支援学科の皆さんと一緒に、狭山校舎を作り上げていってください。
 
 次に、これから学びを深めようとしている皆さんに、大学での学びについて、お伝えしておきたいことがあります。
 大学での学びは、調べれば一人でもわかることがあるかもしれませんが、友達と切削琢磨し、あるいは教員と一緒になって、意見交換や議論を行うことが大切です。一人では気付かなかったことに気づくことや、考えをまとめて発表すること・伝えることなど、友だちや教員を必要とするでしょう。また、「人とつながることによって自分が変わる」ということにも、気づくでしょう。
 ここで、比較的最近読んだ本を紹介したいと思います。イーライ・パリサーが書いた、『フィルターバブル』というタイトルの本です。皆さんの中にはお読みになった方も多いと思います。元のタイトルは、2012年に出された、『閉じこもるインターネット、グーグル・パーソナライズ・民主主義』です。
 私たちはインターネットで、検索エンジンを使って、分からないことや好きなことを調べています。広くいろいろな意見や考えを調べられると思っていますが、それと気づかない形で、インターネットにフィルターがかけられ、「あなたが好んでいるらしいもの ¦あなたが実際にしたことや、あなたのような人が好きなこと¦ を観察し、それをもとに推測する」というのです。あなたがどういう人で、何をしようとしているのか、また、次に何を望んでいるのかを常に推測し、推測の間違いを修正して精度を高めていきます。その結果、私たちは一人ずつ自分だけの情報宇宙に包まれることになります。その宇宙を包んでいる大きな泡を、フィルターバブルというのです。
 ここでお伝えしたいことは、検索して分かったことがすべてではないし、自分にとって都合の良い、一部の情報しか集められていないかも知れない、ということです。学び、研究を進める上では、より多様な事実や意見を知ることが重要であり、客観的に考えることが大切ではないかと思います。
 加えて、「学び」は「挑戦」でもあるということです。面倒であると感じたり、疲れてやる気が起きなかったり、初めてのことで分からないことがあったり、何かの理由をつけて、遠ざけてしまいがちです。学びは皆さんの世界を広げます。しっかりと挑戦していってください。
 これからの日本社会は、これまで誰も、見たことや、経験したことのない、少子高齢社会です。答えを誰も知らない世界です。そこに向けて、大学時代だからこそ、失敗しつつも、答えを求める努力が必要になります。これまでは、多くの場合、「問い」があり、「解答・正解」がありました。これからは、先ず「問い自体」を自分で考え、答えを出していかなければならなくなります。
 本日入学された皆さんには、大学という最高の教育機関で、自らを成長させるよう、努力し、将来を担う、お一人お一人になって頂きたいと思います。そして、四年間で、深い専門的な知識・技術を身につけると同時に、広い視野で物事を見たり考えたりできる能力と、どのような人とも接し、コミュニケーションがとれる、豊かな人間力を培い、積極的に社会に貢献できる人間に成長して頂きたいと思います。
 
 三つめに、本学における教育改革などへの取り組みの一端をお伝えします。
 本学も、他の多くの大学と同様、文部科学省の高等教育政策のもと、さまざまな大学教育改革が求められ、取り組みを進めています。特に本学は、菅谷定彦理事長をお迎えして以降、新しい時代に入りました。教育・研究と本学の発展に資する、学内改革が進められています。
 その一環として、これまで学生による授業評価や授業の進め方改革、カリキュラム改革等を進めてきました。引き続き、学生の皆さんにとって、より主体的に学べる環境を整えていきます。
 もう一つ、大学と地域や社会との関わり方についての変化があります。大学は今や、持てる資源を使って、地域や社会に貢献していくことが求められるようになっています。本学も、人間の生涯と全生活にわたって、「ひとの生を支える教育・研究の総合大学」として、力をつけてきました。その先生方の研究を発展させ、大学全体として特色ある研究にまとめ上げ、取り組んでいく予定です。
 その取り組みにも、学生の皆さんの関わりをお願いしたいと思います。皆さんの学びと地域や社会への貢献が結び付けられ、東京家政大学としての力を発揮できると考えています。
 
 以上、三点についてお話しさせていただきましたが、最後に、女子大学の中でのリーダー・シップ養成ついて、一言追加して、申し上げておきたいと思います。
 リーダーというと、「強く、権力を持ち、引っ張っていく」といったイメージがあります。しかし、変動する社会の中にあって、リーダー・シップの多様性が言われています。一緒に学習をしたり、あるいは、一緒にボランティアをしたり、お世話をする、さらには活動に巻き込んでいくなどの、新たなリーダー・シップのスタイルが指摘されています。
 最近出版された本の中にも、「リーダーが自分以外のメンバーをどう支えていくか」という、「フォロワーシップ」が大切である、ということが主張されています。「カリスマ指導者として組織をぐいぐい引っ張る」、というようなリーダーではなく、「リーダーがメンバーを支える」、そのようなリーダーが、「崩れにくく、成長できる組織をつくる」、というのです。フォロワーといえば、リーダーに従っていく立場の人を指していましたが、いまや、リーダーこそ、そのフォロワーシップを身につけることが求められるようになっています。
 既に、本学の卒業生が証明していることではありますが、更に社会が多様化する中で、社会貢献し、自分らしく生き、行動できる女性として育つ上で、女子大学が大きな意味を持ってくると考えています。
 東京家政大学は、みなさんの活躍を支援する機関として、充実した四年間になるよう、お手伝いをします。よりあなたらしくなる個性化と、社会の有能な一員になるための社会化を、同時に達成するのが教育です。難しい課題ではありますが、「愛情・勤勉・聡明」の生活信条をわがものとして、共に学ぶ中で、お互いに成長していきたいと思います。
 大学時代の友人は生涯の友となるでしょう。学びを通して、また、サークル活動やボランティア活動などを通して、多くの学生と交流し、意義ある大学生活を送ってください。
 
以上をもって、式辞とさせて頂きます。
本日は、ご入学おめでとうございます。
 

学長 山本和人
 

2018.03.18 「平成29年度学位授与式告辞(概要)」はこちらをご覧ください。

2017.04.01 「創立140周年にむけて」はこちらをご覧ください。

2016.04.01 「創立135周年をむかえて」こちらをご覧ください。

2015.04.24 「未来に向けて、さらなる前進~建学の精神に基づく教育の充実と発展を推進~」はこちらをご覧ください。

2014.04.01 「生き生きと自分らしさを発揮し未来社会に貢献できる学びを」はこちらをご覧ください。

2014.03.20 「平成25年度学位授与式告辞(抜粋)」はこちらをご覧ください。

2014.01.14 「今年は、天馬かけるがごとく」はこちらをご覧ください。

2013.10.28 「狭山キャンパスに平成26年度2学部新規開設(内示)子ども学部子ども支援学科と看護学部看護学科」はこちらをご覧ください。

2013.09.20 「暑い夏休みでした。お帰りなさい。」はこちらをご覧ください。

2013.07.19 「前期も終盤で試験が始まり、夏休みの課題も見えてくる」はこちらをご覧ください。

2013.04.16 「平成25年度入学式式辞(概略から抜粋)」はこちらをご覧ください。

2012.11.06 「卒業論文・研究・制作、公開発表・ショー、修士・博士論文」はこちらをご覧ください。

2012.10.13 「オリンピックの後は”学園祭”」はこちらをご覧ください。

2012.07.31 「前期を終えて ロンドンオリンピックと女性」はこちらをご覧ください。

2012.05.14 「平成24年度入学式式辞(概略を抜粋)」はこちらをご覧ください。

2012.03.30  「平成23年度学位授与式告辞(抜粋)」はこちらをご覧ください。

2011.12.07  「試験は、飛躍をもたらす機会です」はこちらをご覧ください。

2011.09.22  「平成23年度後期を迎えて」はこちらをご覧ください。

2011.07.29  「平成23年度前期を終了して」はこちらをご覧ください。

2011.06.17  「平成23年度入学式式辞(抜粋)」はこちらをご覧ください。

 

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